皆月は能登半島の西海岸、奥能登最大の町輪島に近い、曹洞宗大本山総持寺祖院がある門前町の南端に位置する小さな漁村集落。皆月湾は周囲を山に囲まれ三日月のような形の入江ながら、地名の由来は港を意味する「水津城」からきているとか。
県道266号線が開通するまでは、山を越え、また山を越え陸の孤島そのものでした。
しかし、この皆月には古くから残る「あまめはぎ」という伝統行事があります。この祭事は秋田県男鹿半島の「なまはげ」と類似するもので、国の重要無形文化財に指定されています。
皆月は古くから水夫に従事する者が多く、輪島を始め大阪などにおける大型船の船長を務めるものが多かったといいます。藩政期には北前船を初めとする日本海有数の湊の一つであり、今は小規模な沿岸漁港であるものの、集落の規模は同じ門前町の黒島と同じかそれの上を行く規模を誇ります。
北前船は全国各地の寄港地の文化をも運びました。山形県酒田市の京文化などが知られていますが、この能登半島の小さな港町にもはるか北方の伝統行事が姿を変えて伝わっていたのです。
皆月は僻地の漁村でありながら、決して過疎と衰退を繰り返す寂れた集落ではありません。建物は能登半島で一般的な下見板張りを基本として、同じ様式でリフォームされている建物も多く、ユースホステルがある事からも人の往来は今もあると思われます。そんな知る人ぞ知る箱庭のような集落が能登半島には今も生きているのです。
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