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  伊勢古市
いせ ふるいち
 精進落としの町として賑わった伊勢神宮の遊郭街
 三重県伊勢市古市町・中之町・倭町

 構成:旅館麻吉(木造5階)・妻入り民家 ■ 駐車場:なし
 
 

江戸時代の古市は伊勢内宮の門前町で、間の山と呼ばれる低丘陵上に位置します。
江戸初期には閑散とした農村でしたが、門前町の急速な発展に伴って人口が増加する一方でこの地域は耕地面積がほとんど無く、農民は生活の為に伊勢神宮への参宮客の接待に活路をみいだしました。参宮を終えた庶民は「精進落とし」といって、古市の町で遊び、古市は遊郭街へと姿を変えます。
最盛期には遊郭70軒、遊女1,000人、大芝居小屋2軒と一大歓楽街になります。
なかでも油屋・備前屋・杉本屋という三大妓楼は他の遊郭とは各が違い、なかでも備前屋は古市屈指の大楼閣でした。また油屋で起こった殺傷事件は「伊勢音頭恋寝刃」として今でも歌舞伎で演じられています。
しかし明治以降、交通機関の発達によってこの参道筋を通る参詣客は途絶え、古市の町は衰退します。さらに火災や戦火によってかつての遊郭街の姿は完全に消滅しました。
現在、古市町の旧参道沿いには切り妻造り妻入りの民家がわずかに見られますが、往時を偲ばせるような佇まいの建物は完全に残されていません。

しかし中之町に唯一残る巨大な旅館建築が冷めた心を奮い立たせてくれます。
「 麻吉旅館」は丘陵の斜面に建てられた「懸造り」という多層木造5階建ての建造物で、いくつもの棟や蔵が通路や階段で結ばれ、中世ヨーロッパの城塞都市を思わせる、立体的な景観を構成しています。
伊勢を訪れた際にはぜひ見ておきたい風景の一つです。ちなみ宿泊も出来ます。