京都市街の北、上賀茂神社からさらに6kmほど山中に入っていくと、鞍馬天狗や源義経で知られる鞍馬寺があります。鞍馬寺は標高560mの木々が鬱蒼と茂る全山を境内とする山寺でその麓の門前町には今なお古い町並みが残されています。
古くから鞍馬山は山岳信仰の地。山伏による密教も盛んで、そのために山の精霊である天狗もまた鞍馬に住むと言われます。そのような奥深い山里であるため、世を逃れた人たちの隠れ住む格好の場所であり、さまざまなエピソードや物語を生み出す土壌がありました。
では、人気の少ない辺境の地だったかというと、さもあらず。鞍馬寺は貴賤を問わず信仰を受け入れていたので参詣客は絶えず、また鞍馬へ通じる道は鞍馬寺門前で終わりではなく、さらにその先、山々を越えて「鯖街道」と呼ばれた朽木街道へ合流します。
鞍馬街道も京と小浜を結ぶ需要な物資輸送の道であり、京の北の玄関口として商家が立ち並び、人と物資で賑わう町だったのです。 |