旧戸河内町は広島県の北西端、島根県美濃郡と接する最奥の町で、景勝地「三段峡」が町の脊梁を成しています。かつては町の中心地である戸河内と景勝地の三段峡までJR可部線が通っていましたが、2003年に可部駅以北の非電化区間がすべて廃線となって、今もその遺構が随所に残されています。
現在町の玄関口は中国自動車道・戸河内ICがあり、その入口付近に「道の駅」と併設したバスターミナルが設けられ、陰陽各地と結ぶ路線バスの要衝となっています。
戸河内は、古くから益田など山陰地方と広島方面を結ぶ街道にあって、町場を形成する中心部は「本郷」と呼ばれ小さな市場町が形成されていました。
もっとも、市場町とはいっても他の地域との交易は無く、また定期的に開催されるのでも無く、あくまで近郷農村の需要を満たす程度の生活市であり、また街道を往来する商人も毎年3・8・9月に宮島で行る宮島市を目的とした石見商人が宿泊する程度に限定された、宿場町としても言える内容のものではなく、人馬継所もありませんでした。
かつての市場町・本郷は、後に町役場が置かれ中心商店街からなる上本郷と、旧河港にして市場町であった下本郷に分かれ、田吹川に掛かる本郷橋で結ばれています。
戸河内・本郷はゆるやかな坂の町で、地形にそってゆるやかに蛇行していて先を見通せない事が期待度を高めます。建物は大正・昭和初期のものが大半ですが、連続性がありますが、人口約3,000人の町の中心市街なので、商店の数も人の往来もほとんど見かけません。
静まりかえった町並みですが、山間の集落に欠かせない水路を流れる水音が心地よく五感を楽しませてくれます。
|